「わが家の教育の原点その3」

社会人3年目の春に国家試験受験のために休職して家庭教師をしながら受験勉強しました。家庭教師は最初1人から始めたのですが徐々に依頼が増えて2年目からは「勉強の出来ない子供のための小中学生個別指導塾」にして、3年目には3教室になり大学時代の友達に手伝ってもらいました。高校受験合格者は1年目5名、2年目8名、3年目13名と3年間で合計26名の全員合格となりました。

勉強が出来ない子供のための個別指導塾でしたが私の塾の指導方法は独特です。午後5時からは小学生の部、午後7時からは中学生の部です。最初の20分間は全員で塾内の掃除をします。「君は床の拭き方を上手いね」等と全員に声を掛けると生徒達は笑顔になります。次の10分間でモーツァルトの「田園」を聞きながら瞑想します。これで生徒達は「勉学集中モード」に突入します。

残りの1時間30分で各自のペースに合わせて不得意科目の分からない所まで遡り徹底的に究明して行きます。いわゆる「火元発見方式」です。

塾の終わる午後9時からは塾生の家を個別訪問します。いわゆる「夜回り先生」でご両親とのコミュニケーションをはかります。その後塾生の勉強部屋を見せてもらいます。壁に貼ってあるアイドルのポスターや本棚の漫画本をネタに塾生と心の交流をするのです。

3年目の末には会社からの帰還命令が出ましたので学習塾は友達に託して会社に戻りました。

この学習塾での生徒達への指導経験を通して「子供達はみんな無限の可能性を秘めている。それを大人の勝手な判断で潰してしまうのは何ともったいないことか」と思いました。後年、塾生の１人が国立大学医学部に合格して「先生有難うございました」と電話をもらった時は、思わず涙が出てしまいました。