人間の心の光の強さ
小事にとらわれて大事に敗れてはならない。
つまらない小事に心をとらわれることなく、広く大きく自由な天地に心を翔(かけ)る豊かさを取り戻すことだ。
考えてみると、人間は実につまらなく、取るに足らないことにこだわり続けて生きている。本来心はもっと大きく自由なものなのに、それを小さく暗い所に押し込める努力を重ねて、自分も苦しんでいる。心は広大で光輝いているものなのだ。本来の心を取り戻すのだ。
国内が朝廷と鎌倉の二大勢力に分断されて、政情不安の歳月を耐えなければならない時、栄西は「禅を興し国を護るの論」を著して、為政者の心のあり方を正面から説いた。
栄西は国王の仏法援助の大切さを重く見た。
「仏法が必ずその国に弘通(ぐづう)するには、その国の国王の援助によって流通されているのである。この故に釈尊は仏法の流通について、ねんごろに国王にその事を付嘱されている。この事によって王もまた、その利益を受けること莫大なものがある」と栄西は説くのである。栄西は、身体の小さい人であったが、心は誠に大きい人であった。一切の物事にこだわらない、広くて大きな心を持っていた。
「広大なる人間の心よ、天は空高くして極限は無いが、それにしてもその心はその高さを超えて出でるものがあり、地は層が厚くして測ることが出来ないが、それにしてもその心はその厚さの下をそれ以上に広がり出でるものがある。太陽や月の光も、心の光に比べたら、その光を超えうるものではない。従って、心の光は日月の光明の上にさらに超出している」
この「大いなる心」を持って生まれているのに、人間はどうしてこんなに心が狭いのだろうか。
(自分を強く励ます言葉)
自分の心を、狭い独房の中に閉じ込めて一生を送ろうと考える人はいない。それならば、太陽も月も、この心の光に比べたら問題にならないと言われる程、人間の心は大きく強いことを再認識して、とらわれない自分の心を作ることだ。
←赤根祥道先生著書「自己修養のすすめ・十大禅師に学ぶ人生の極意」の「第二章 心身不動の胆力を養う・栄西禅の極意に学ぶ」から抜粋
「国内が朝廷と鎌倉の二大勢力に分断されて、政情不安の歳月を耐えなければならない時」というのは、NHK大河ドラマの「鎌倉殿の13人」が描いている争乱時代のことです。
この争乱時代に二度も宋へ渡り仏法を深く研究して禅を日本へ広めた栄西禅師の功績は大なるものがあります。
外国人観光客が日本へ来て驚くのは、ゴミの落ちていない綺麗な街並みと行儀良く並ぶ行列の整然さだと言われます。この素晴らしい日本人の心を脈々と現在に伝えてくれた私達のご先祖様には深く感謝です。またその元となる仏法の教えを時の権力者に説いた栄西禅師の器の大きさには、感服致します。
ちなみに栄西禅師は、四尺八寸(1m50cm)の身長の小柄な人であったと言われています。
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