ここまでお話してきたように、確かに極度のストレスは自然治癒力を低くしてしまいますが、しかしストレスを全く感じない生活をすればよいのかというと、決してそんな事はありません。

例えば定年退職になったとたんにがんにかかる人がいます。それも退職金を沢山もらって、これから2、3年遊んで過ごすかと考えている人程、その傾向が強いようです。逆に退職して直ぐに別の仕事を探し回る人にはこういった傾向は見られません。一般的に考えれば、やっと宮仕えのストレスから解放され、悠々自適の生活を送れると言った所で、何故このような事が起こるのでしょうか。

これは、仕事をしていた時には受けていた緊張感がなくなってしまうことが原因なのです。つまり適度なストレスを感じる事は、いい意味でも緊張感をもたらし、人生にハリを与えてくれるものなのです。

ストレスという言葉を初めて医学の領域に導入した、カナダの内分泌学者のハンス・セリエ教授が次の様に言っています。

「ストレスは人生のスパイスであり、体のいかなる反応も必要としないようにストレスを無くしてしまうことは、死を望むのと同じである」

←帯津良一博士著書「自然治癒力」から抜粋

関白亭主からガミガミ言われ続けたストレスを、茶飲み友達とのおしゃべりで上手くストレス解放している奥様の方が長生きするのはなる程と思います。

我が家には3人の娘がいますが、結婚相手を見つけることや結婚式の手配まで全てを娘達に任せてきました。しかし結婚式の前には娘達に「いいかい、嫁ぐということは相手の家の娘になりきることだよ。先方の娘になりきるまでは家に帰ってきては絶対ダメだぞ」ときつく申し渡しました。

長女はその地方の業界ではトップクラスの社員100名余の老舗企業の跡取り息子に嫁ぎました。私は親バカで、部屋数が10室もある先方の純和風の家に結婚式前に2回も図々しく泊まりに行き、お父さんとお酒を飲んで仲良くなりました。その時、長女は台所で先方のお母さんと楽しそうに料理作りをしていましたので安心しました。

ところが3人目の子供が生まれた後に、子供達のしつけの事で先方のお母さんと激しく対立するようになりました。娘には嫁としてのストレスも相当溜まっていたのでしょう。娘がお母さんに「私達はこの家を出ます」とキッパリ言うと、お母さんが「ちょっと待って、世間体もあるから隣の敷地にあなた達の家を建ててあげるわ」と言って何と新築2階建のマイホームをプレゼントしてくれたのです。